【現地レポ】ブラジルレアルの大幅下落。途上国における為替リスクと現地業者の動向。

2018年に入ってからブラジルの現地通貨レアルの下落が止まらない。

年初には1レアル=34円~35円を推移していたものが、3月末頃には32円、5月には30円を切り、一時1レアル=28円にまでその価値を落とした。

半年間で20%の通過価値の下落という、ブラジルであっても稀にしか起きないこの事象の背景には、各国通貨に対して広く進んでいるドル高の影響以外に、ブラジルの国家財政に対する危機、年末に予定されている大統領選を巡る政局不安、隣国アルゼンチンの超インフレの影響に対する懸念など様々な要因がささやかれている。

対ドルレートでも年始の1ドル=3.2レアル前後であったものが、直近は3.9レアルまでレアル安が進行しており、ブラジル国内の事業者に多大な影響に困惑しているのが現状だ。

各マスメディアの情報はマクロ的な情報であり、現地での実際の影響はどんなことになっているのかというのが結局見えてこない。

小生がコンサルティング業以外に現地で経営している企業は消費財関連であり、製品の輸入比率が高い業界である。5月末に大規模な輸送業者のストライキが起き、これに並行して通貨下落の兆候が見え始め、ストがほぼ終結した、6月7日に1ドル3.97レアルという最安値を記録した。

業界内ではリアルが3.6にまで下落した頃から、各輸入販売店間で情報交換が始まり、しばらく様子をみて、必要あれば、最終エンドユーザー価格と再販業者への値上げをすることで合意。

6月7日に全業者合意で一律平均10%弱の最終ユーザー価格の値上げを決定して、翌日にはオンラインショップ、店頭価格の値上げを実施した。値上げして一週間経過したが、各売店の現地販売は鈍化している。

これはには次のような理由がある。約2割ほどの再販業者は値上げに応じていないのだ。彼らは値上げ前の価格で販売しており、市場自体でエンドユーザーは様子をみて購入を控えていると分析できる。

輸入販売店は通常2ヶ月の在庫は所有しており、今月分の販売は、過去のレートが良いときに仕入れた在庫である。が、損益計算時には、在庫評価も平均法を使用する会社が多いため、在庫評価もじわじわ、後から効いてくるのだ。

すべての輸入代理店の意見として、ブラジルの問題は、対ドルのレアルの為替でなく、為替全体の不安定さであると指摘している。

各社とも年初に予算用の為替レートを固定して、年間を通じてのPL/BS/CF、投資などのプランをベースに数値管理を行うが、為替のブレによる調整業務にとられる時間が大きい為、我々にはこの不安定さによる計画の見直しや各種修正業務は大きな負担だったりする。

なお、自動車、家電等の主製品の現地生産化は進んでおり、為替の影響は低減できるが(パーツ、材料の現調率による)、それ以外の製品はまだまだ、海外からの輸入率比率が高いため、ブラジル経済において為替の影響はいまだ多大である。

しかしながら、消費財については、ブラジル独自で商品開発を行い、現地生産をして、販売を行えるような会社はまだまだ出てきていないのが現状である。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です